東京高等裁判所 昭和36年(く)37号 決定 1961年5月17日
少年 K(昭一七・八・六生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
申立人の抗告理由は、本案保護事件記録に綴られてある抗告申立書記載のとおりであつて、その要旨は、
申立人は窃盗保護事件について昭和三六年四月七日東京家庭裁判所において中等少年院に送致する旨の決定を受けたものであるが、実は自分は有限会社○○運輸につとめていたが、給料二月半分を支払つてくれないので、給料の一部として自動車工具一式(価格五千円)を盗んだものである。それで以前に家庭裁判所で不処分の決定を受けているが、一年間位まじめに働いていたのであるから、今度の中等少年院送致決定はずいぶん重いと思う。それでこの決定を取り消してもらいたいので抗告に及んだ。
というのである。
よつて審究するに、本件保護事件記録及び少年調査記録によれば、少年については原決定説示のごとく、昭和三二年以降、本件以外に、窃盗保護事件三件、詐欺横領保護事件及び業務上過失傷害保護事件各一件及び道路交通取締法違反保護事件七件が原裁判所に係属し、検察官への送致決定、審判不開始決定又は不処分の決定がなされ、その都度保護的措置が加えられたにもかかわらず、少年は重ねて本件非行に及んだものであつて、これは少年に対する在宅保護の効果のみるべきものがないことを示すものである。加うるに本件を含めてその非行内容は漸次悪質かつ常習化して来ているし、その生活歴、性格、とくに本件に関する調査審判時における少年の態度などに照してみると、再犯の虞れが強く、現状における少年の在宅保護はとうてい困難と認められることなどを総合してみると、この際の措置としては、少年を中等少年院に収容して矯正教育を授けることがその健全な育成をはかるため最も適切であると認められ、原決定に法令違反、重大な事実誤認又は処分の著しい不当は見い出されない。であるからこれが取消しを求める抗告は理由ないものとして排斥せらるべきである。
よつて少年法第三三条第一項に則つて本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道 判事 堀義次)